約 18,821 件
https://w.atwiki.jp/r2d2/pages/62.html
バロック風というのだろうか。 このだたっぴろい部屋にあるインテリアは、いちいち派手な装飾がついている。彼が今座っている椅子にしても、肘を置いているテーブルにしてもそうである。テーブルの端やや椅子の背もたれはバラの花が複雑に咲き乱れているような黄金の彫刻で縁どられ、四つ脚は滑らかな曲線を描いている。 彼はこういった装飾が苦手である。良さが分からない。 どちらかというと、無駄のないもの方が美しい。そう思う。いくら見た目が華美で豪壮だろうと、それによって何らかの機能が追加されないのであれば意味がない。無駄がなく、機能的に優れているもの。それこそが本当に美しい。 インテリアと同じく華美な花の意匠を施されたティーカップ、そこに注がれた紅茶。アールグレイとかいうらしい。その透き通った茜色の水面に、彼ご自慢の銀ぶち眼鏡が映り込んで一瞬煌めいた。 彼は紅茶の表面を覗き込む。 オールバックにまとめた髪。眉間に刻まれた皺。憂鬱そうな目元。高い鼻。こけた頬。薄い唇。尖った顎。四角い銀ぶち。 我ながら陰気である。病人のようである。商社マンのようでもある。魔法使いにも見えないことはない。 だが、実際の彼はそのどれでもない。 彼は科学者である。 そして――宗教者でもある。 ACT.48 Priests ~抜け目ない愚か者のように~ 「カウスが死んだか……。だが奴は我らの中でも最弱……」 「そういうもの言いだから、器量が小さいのですよ。フィル」 そう言ってほほ笑み、ヴァーユはティーカップに口をつける。 一方器量が小さいと言われてしまったフィルは眉間に一層の皺を寄せ、フンと鼻を鳴らして正面に向き直った。 ここはアイゼンベルクの神殿――といっても見た目は完全にバロック風宮殿の類だが――にある大食堂。「神」や八神友が食事のために集まる部屋である。 全ての壁と天井が白塗りで、それらの継ぎ目には黄金の縁取りがなされている。しかもただの縁取りではなく、それぞれ植物や翼を広げた鳥、天使、女神などの彫刻が施されており、それらが部屋の中央に吊るしてある巨大なシャンデリアの光に照らされて落ち着きの悪い煌びやかさを醸し出している。地が白だから一層生える。 同様に黄金の縁取りがなされた縦長のテーブルや椅子は朱に塗られており、部屋の内装に対して統一感があるのだか無いのだか判じかねる全体像を作り上げている。この部屋とインテリアはそれぞれが凄まじく派手で、しかも主張が強いのだ。趣味が悪いといえばそれまでなのだろう。食堂に限らずこの神殿の内装はいちいちこんな具合で、それに対する神友達の評価はまちまちである。ある者は「無駄」と切り捨て、ある者は「素敵」という。 神殿内には、いたる所に大小様々な絵画が存在する。壁にかけるタイプのものから、天井や壁に直接描かれたものまで、その種類と大きさはまちまちである。だが題材は得てして人間のあらゆる神話のドラマチックな場面なのであった。 この食堂もそのご多分にもれず、四つの壁には合計で十三の絵画が飾ってある。 この部屋の中央に据えてある恐ろしく長い朱のテーブルに対して、椅子の数は僅かに九つ。神と八神友の分である。長方形の短い一辺に神の座る椅子があり、それに引き連なるようにして残りの八脚が二方四脚ずつに分かれ、長辺に並んでいる。 フィルの指定席は神の座から見て左側の、二番目に神い近い位置であった。第五神友である彼がこの位置にいることからも分かるように、この指定席というものは序列に即したものではない。 ヴァーユはフィルの席から見て右斜め前、つまり角を経て神のすぐ右側が指定席である。 それにしても……この中世西欧風の部屋には白衣の男や、オレンジ色の袈裟にジーンズ、そして銀の腕輪を身につけた褐色肌の青年はあまりにも似合わない。 彼らは紅茶を嗜みながら、神の座の正面に位置する壁に飾られた巨大な黄金の額縁――その中に映し出されたデファンスシティの戦闘の様子を眺めていた。普段はキリストの絵が入っているその額縁は、実は巨大なモニターなのである。 「ぶえええ~~~」 そして、今この部屋でそのモニターに映し出された映像を見ているのは彼ら二人だけではなかった。 フィルの隣の席で、緩いウェーブのかかった金髪の美少女が、顔面からありとあらゆる汁を垂れ流しながら大泣きしている。 テティスである。 「カウスがあー……えっ、えっ」 「実に彼らしい最期……といえるわね」 そしてもう一人。 フィルの正面の席に着いている、艶やかな黒髪と澄んだ青い瞳の少女。年のころにして十六、七といったところか。 黄太達が静香と出会った森で、メタルグレイモンに進化したアグラに仕留められそうになったマーレを助けた神友――クーエルである。 当時毛皮の北方民族衣装を着ていた彼女は、今は濃紺のドレスに白いエプロンとレースがついた衣装――いわゆるメイド服を着用していた。首には銀色のチョーカーをつけ、長い髪もツーサイドアップにし、可愛らしいピンク色のリボンを結んでいる。 常に無表情が張り付いているそのビスクドールの如き美しい顔や派手な服装は十分人目を引くに足りうるが、何より目を引くのはその胸部であった。エプロンドレスに双丘を成すそれは、彼女の最大の特徴といってもよい。――潔く言おう。彼女は巨乳である。 白衣の男も破戒僧のような青年も、顔中から汁を垂れ流す少女もこの部屋には似つかわしくない。だが、このクーエルだけは中世西欧風で無駄に派手なこの部屋に妙にマッチしていた。ただしそれはあくまでビスクドール――インテリアとして、である。人物として甚だ違和感があることは、やはり他の面子と一緒なのだ。 「なんで死んじゃったのお~~~うっ、ぶえっ」 この部屋には四人の神友がいるのである。そしてその全員がカウスの最後の戦いを映像で見ていた。 盟友の最期だというのに――テティス以外の三人は実に冷静なものであった。 「まったく……さっきからズビズビとうるさいやつだ。顔じゅうがびしょ濡れではないか……ほら、これを使え」 テティスを見かねたフィルは白衣のポケットからハンカチを出して彼女に渡す。 「ありがとう……うう。ズビーーーーーッ!!」 テティスは手渡されたハンカチで思い切り鼻をかんだ。 フィルは涙を拭かせるつもりでハンカチを渡したのだが……。 「……はい。返す」 テティスは粘着質の汁がべっとりとついたハンカチをフィルに差し出す。 「いらんわ!」 「相変わらずフィルはテティスに甘いんですねえ」 はっはと笑いながらヴァーユが言う。 「ロリコンですものね」 いつもの無表情でクーエルが言う。 「誰がロリコンだ! 誰が!」 「いやーん。テティス、身の危険感じちゃう!」 先ほどまでの涙はどこへやら、テティスは楽しげに自分の肩を抱き、上体をフィルから遠ざける。 「貴様……今の今まで泣きじゃくっていたくせに調子に乗りおって……身の危険以上のなにかを感じさせてやろうか?」 「おやおや、真性のようですね」 「最低ね……」 「死ね変態! きゃはははは!」 フィルは弄られキャラなのであった。 「そんなオチがあるか!」 事実なのだから仕方がない。 弄られキャラという事実、そしてロリコンであるという事実を受け止めなければ、彼はきっと前に進むことができないのである。そう、自省と自制が必要だ。特に性癖の面に関していえば、何より自制が大事であるといえよう。 自制しなさい。 「だ・か・ら私はロリコンではないと! 言っているだろうがァーーーーーーーーー!」 ほう……では聞くが、貴様の部屋にあるあのスクール水着は何だ? 「あ、あれは……! 私が不在の時、プール上がりのテティスが勝手に部屋に入って……それから前に私に注意されたことを思い出して、『着替えなきゃ』と思ったらしく、どういうわけだかそのまま私の部屋で着替えた時の……忘れ物で……!」 そうか。しかし解せないな。何故、すぐに返さないのだ? 「う……そそそそれは! き、機会がなくて、だな……」 しかも……これがまた真性臭くてアレなんだがな……何故、〝そのまま〟にしている? 何故洗濯すらしないのだ? 「ぐっ!」 あ、ぐっ! って言った。遂に認めたか……。 それにしても、お前はアレを一体ナニに使って――。 「や、やめろ! 私は断じて、断じてロリコンなどでは――!」 「フィル? ねぇ、フィルってば」 「――ハッ!」 それまで謎の存在と謎の会話を繰り広げていたフィルは急に現実に引き戻された。 テティスが彼の銀ぶちの中を覗き込んでいる。 「わ、私は――」 「急に黙り込んでポケーッと宙を見つめ出すから、いよいよ泣きだすんじゃないかと思いましたよ」 ヴァーユが不敵に笑っている。 先ほどの会話は――自分が話していた相手は誰ったのだろうか。夢か? いや、夢は眠っている時に見るものである。自分は目覚めながらにして夢を見ていたとでもいうのだろうか。それとももしや自分の中に芽生えたもう一つの自我だとでもいうのだろうか。自分の性癖を肯定する――抑圧された部分を開放するような自我。 いずれにせよ、今の彼には結局その正体を知ることはできない。ひょっとしたら、これから先も知ることはないのかもしれない。 「失礼しやす」 フィルがまだ多少の混乱を頭の隅に抱え、それでも話を進めようとした時――低く渋い声と共に、部屋に一人の男が入って来た。 がっちりとした長身の男である。頭髪はきっちりとした角刈りにし、グレーのスーツの内側に派手な赤いシャツを着た男である。尖がった襟を持つシャツのボタンは上から四つが開けられ、その下の筋肉質な胸板と、ひじきのような胸毛が覗いている。金色のネックレスが眩しい。頭髪と同様に角ばった顔には切り傷のように細く鋭い眼がついており、左目の下には本物の切り傷もあった。――つまるところ、「そのスジのお方」のような風貌である。 男はその風貌に似合わぬもの――ホールのチーズケーキを持ってテティスとフィルの席の間に立った。 「お嬢、チーズケーキが焼けました」 「ギンジ! おーそーいー!」 「も、申し訳ございやせん。何しろ初挑戦だったもので……」 「言い訳はいい! さっさとよこしなさい! アタシもうお腹ぺこぺこなんだからー!」 「へ、へえ!」 腕を万歳の形に振り上げて喚き立てるテティスの前に、ギンジはへこへこ頭を下げながらチーズケーキの乗った皿を置く。テティスの顔の三倍はあろうかというそのチーズケーキの横には、柄の先にウサギさんの頭がくっついた可愛らしいフォークが添えられていた。 「いただきまーす!」 テティスはウサギさんのフォークを引っ掴むと、ホールのチーズゲーキをカットもせずにそのままガツガツと食い始めた。 信じがたいことだが、どうやらワンホール丸々一つが彼女一人分らしい。 「お、お味の方は……」 「うん! スッゴクおいしよギンジー!」 緊張した面持ちでテティスの顔色を窺うギンジ。それに対し、テティスは口の周りにケーキのかすをつけながら満面の笑みを以て応えた。 「きょ、恐縮でごぜぇやす」 「毎回、本当によく食べるのねこのコは」 クーエルがやはり無表情で、それでも明らかに呆れた口調で言う。 「ギンジさんも大変ですねぇ」 「いえ、自分は……お嬢の喜ぶ顔さえ見れれば、それで」 そう言ってギンジは頬を微かに染める。もしやこいつも――。 「フン。カウスが死んだことなど、もう忘れてしまったかのようだな」 「何をー!」 冷水をかけるようなフィルの一言に、テティスは口をもごもごさせながら怒ったような顔をしてみせる。 「べふに忘れてないもーん! ぼふっ」 咀嚼しかけのケーキが小さな口から飛び出す。 「ええい、貴様はもう食い終わるまで喋るな! メガネに何かついたではないか! ……さて、ではしばらくは我々だけで話そうか。カウスの最後についてであったな」 「雑談に仕切り直しがあるというのも可笑しな話だけれどね」 そう言ったクーエルの顔は、しかしちっとも可笑しくなさそうであった。このビスクドールが笑ったところなど、八神友の誰一人として見たことがないのである。 「実に彼らしい最期であった……ということでしたね。結局はノナのために戦い、彼女を守って死んだというところが実に彼らしいと、私もそう思います」 「フン。限りなく愚かなことだがな」 このフィルの発言に、ヴァーユの眉がピクリと動く。 そしてクーエルは彼のその変化を見逃さなかった。彼女はヴァーユの心情を汲み取るようにして、カウスのフォローに入った。 「あら、素敵なことだと思うわ」 「素敵? 何が素敵だというのだ」 「愛のために死ぬなんて、とてもロマンチックじゃない」 この時、世界のどこかで彼女の言葉に反応した男がいたことは言うまでもない。 「それが素敵か? 下らん。愛などが命を懸けるに足る程のものとは、私には到底思えんな」 「それはあなただからですよ。現にあの臆病なノナでさえカウスのため……愛のために自らの命を危険に晒してまで戦ったのです」 「カウスの役に立ちたかったのね。あのコらしいわ」 「だが、そのノナが戦場にでてきたせいでカウスは命を落としたのではないか。結果的にノナは、自分で愛する者を殺したようなものだ。なんと間抜けなことか」 「そういうことを言うものじゃないわよ。これは愛というものの深さ――一筋縄ではいかないところを表しているのよ」 「ノナにとって愛は、彼女自身を強くするものだった……いや、ノナに限らず女性というものはそういうものなのかもしれませんね。愛によって強くなる。子を守る女性ほど強いものはない。母は強し……とは、よく聞く話ですし」 「確かにそれはよく聞く話だがな。無論、実体験があるわけではないが」 「しかしこれが男性となると……話は少し違ってきます。父は強しなんて言葉、訊いたこともありません」 「愛は男性も強くするとは限らないのかしら」 「私に言わせれば、愛などは重りでしかないな」 「だからそういうことを……」 言うものじゃないわ、とクーエルが言いきる前に、ヴァーユが平手を出して彼女の言葉を遮った。 「フィルの言う通りです。愛というものは重いもの。大切であるが故に、重いのです。そして愛が及ぼす作用の男女による違いは、まさにここに原因があるのではないかと」 「どういうこと?」 「精神面においては男性より女性の方が優れているというのは、これもよく聞く話ですね。男性では出産に耐えられないとか。女性は愛の重みに耐えることができる。その重さを自分のもの、自重として、困難に直面したときに踏ん張る力に変えることができる。ところが、男性はその精神面の弱さから『愛をただのプレッシャーとしか感じられない』のです。自分の動きを妨げ、束縛するものとしてしまう」 「カウスはまさにその良い例といえる……かもしれんな。奴にとって愛は弱点になった、というわけだ」 「そうですね。男性にとって愛は弱点でしかない。これは柱にも喩えられるかもしれません。彼を支える柱は、それと同時に急所でもあるわけです。自分をしっかり支えてくれるその柱には、言い換えればこれはきちんと重さがかかっているわけで、そこを突かれてしまうと堪らない。一度体重をかけてしまったからには、その柱無しには彼はもう立っていることがままならなくなるのだから」 「成程よく分かるわ。でも、それは女性にも言えることなんじゃない?」 「いいえ、女性の場合は少しばかり違ってきます。女性は精神的に強い。だから『そこを突かれるとまずい』というプレッシャーよりも、『守らねば』という使命感の方を強く感じるわけです」 「愛は男性に対しても女性に対しても同様の効果を齎すけれど、その効果を受けた心の働きは男女によって異なる……そう、これが男女の違いを生み出してしまうのね」 「要は至極簡単な方程式だな。x+l=a、y+l=b。xが男の心、yが女の心。lが愛で、aが結果。違うものに共通のものを足すのだから、自ずと解は違ったものになるわけだ」 「守らねばと感じれば強くもなるでしょうね。……そして、プレッシャーを感じれば弱くもなるでしょう。そこが男女の違いなのね。愛というものに対する、潜在的な意識の違い……」 「愛は女を強くし、男を弱くする――か」 フィルは面白くなさろうに、しかし噛みしめるように呟いた。 そんなフィルの様子を見て、ヴァーユは満足げに口の端を上げた。 「そうですね。愛が全ての者を強くするなどと考えるのは……ロマンチックではありますが、これは心や個というものに対する冒涜とも言えましょう。ま、更に言うならこれは個人レベルの話でもあるのですがね。今のフィルのように方程式を用いて考えれば、これは当然のことですです。何故なら言うまでもなく、ヒトやデジモンの心はxとyの二種類で分類しきれる程単純なものではないのですから……」 「相変わらず色々考えているのね。でも……愛――大切なものが弱点になり得るというのなら、私たちの中には、神を崇めることで弱くなってしまった者もいるということなのかしら」 「フフ……間違っても弱点をつくりたくないというのなら、一つの柱に体重をかけすぎないことが大事です。それが信念であろうが愛であろうが……神であろうが。体重をかけるということは、それは大きな危険性を伴うことですから。そして――」 「フッ……どこに行き着くのかと思えばヴァーユ貴様、行き過ぎた信仰は身を滅ぼしかねないので程々にしておけと、そう言いたいのか? これはとんだ不敬者だ」 「違いますよ。大きな危険性を伴うから、何かに体重をかけるためには〝覚悟が必要だ〟と言いたいのです。ヒトの言葉を中途までで理解しようというのは奢りですよ。せっかく、ようやく本題に入るところだったのに……さて、話を戻します。体重をかけるということは大きな危険性を伴う行為であるからこそ覚悟が必要なのです。そしてカウスは覚悟していた。己の身を滅ぼしかねないということは……自分の体のことですから、彼が一番よく知っていたのでしょう。文字どおり命を削って戦う彼だからこそ、体重をかける云々のたとえを用いずとも――実感によって、愛を貫くための代賞の大きさを誰よりもよく知っていた。その代償の大きさ知って尚、ノナのために命を投げ出すような真似ができた。つまり」 「つまり命を削って戦う者であるカウスは人一倍愛を貫くための代償を――先ほどまでの説明でいうところの「体重をかける上での危険性」を承知していて、その上で覚悟して戦い、命を落とした。ということが言いたいのね?……ヴァーユ――ああ、なんて回りくどい人なのかしら。あなたは要するに、フィルのカウスに対する『愚か』という発言を撤回させたかったのね?」 ビスクドールの口から溜息が洩れた。完全に呆れ返ってしまったらしい。 それもそのはずである。ヴァーユは死んだ仲間を侮辱する発言を撤回させるために、恐らくは生物にとっての至上命題である愛について講釈を垂れる――という遠回りをしたのだから。 撤回を求められたフィルも、参ったというか呆れたような顔をしている。 「分かった、分かったよ……あいつは、我らが同胞カウスは愚かなどではなかった。先ほどの発言は撤回しよう。全く、文学的というか……貴様はいつもそうだな。理解しやすいといえばそうなのだが、回りくどくて要領を得ん」 「フフ……お分かりいただけたのなら結構です。カウスは覚悟者でした。本当の意味での覚悟をできる者はなかなかいない。にもかかわらず、彼はそれに至ったのです。彼は誇るべき同胞です。実に立派な最期でした。それに前置きがなければ今の話はいまいちピンとこなかったことでしょう。回りくどいのが嫌だというのならフィル、あなたは先読みができるのだから、いっそのことこちらの意図を読み取ってくれてもよかったのですよ」 「やってみたさ。それで間違えたんだろうが。……それに私の尽読(ツクヨミ)は正確な未来予知ではないのだ。あくまで未来の選択肢を見るというだけのこと。だから間違うことだってある。戦闘においては、見えた全ての未来を受けて行動を選択する――いわば達人の読みを体現する能力。予測であって予知ではない」 「達人の読みを体現する割には、簡易版を植え付けたあのコは大して強くならなかったようじゃない?……なんといったかしら。あのゴツイ」 「セントガルゴモンか。あいつはまぁ、簡易版が実戦で使えるかどうかを試すものだったからな。だがあれは駄目だった。簡易版とはいえ、尽読を再現するには相当な容量を食うようだったからな。今も言ったとおり尽読を戦闘で生かすためには見えた後の行動選択が重要なのであって、つまり高度な演算能力が必要というわけだ。だが尽読で容量を食ったせいであいつはその辺が――有体にいえば、足らなかったのだな」 「つまり頭が悪くては生かせない能力なのですよね。何だか自慢か厭味にも聞こえましたねぇ」 「フン。否定はせん」 「でも私、あのコがウィザーモンの一行にやられてしまった理由はそれだけではないと思うわ。あのコ、燃料の関係で途中からレーザー……だったかしら。それともビーム? あれを撃てなくなっていたみたい」 「あれは単体で小さな……いや、中程度の街や集落なら潰せるように造った。つまり、単機で大隊に匹敵する攻撃力を有しているのだ。だが単機で動かすには航行範囲とスタミナも問題になってくる。エネルギーを食うような攻撃を使わずとも、目的を果たせるようでなければ駄目なのだ。だから、光学兵器を使い過ぎると帰って来られなくなるようなところへ向かわせた。いわばその点も実験したわけだよ。というより、試した……か。足りないとはいえ、その辺の判断も誤るようでは困るからな」 「可哀そうに。レーザーで敵が進化する前に確実に殺せていれば、彼は死ぬことはなかったでしょう。帰りくらい〝いつものように〟私に天駆(アマガケ)で迎えに行かせても良かったはずよ」 「貴様のおかげでいつも素早い戦線展開が可能なのは事実だがな。それは必要だからやっているに過ぎないことだろう。私の部下を甘やかすこと、これは別に必要なことではない。むしろ部下は突き放すくらいで丁度いい。――テティスを見ろ」 「足りなーい! もう一個焼いてー! 次はチョコレートケーキ!」 チーズケーキワンホールを丸々平らげたテティスは、それでもまだ食い足りないらしい。手足をバタバタさせながらウサギさんフォークを振り回し、「カロリーが云々」と言ってなだめすかそうとするギンジを困らせていた。 「三秒! 三秒以内に焼いてー! いーち!」 「お嬢、育ち盛りとはいえ、これ以上はいくらなんでも体に……ってええ!? もうカウント始まった!?」 どう見ても「そのスジのお方」にしか見えない男が、ウサギさんフォークを振り回す女の子相手にオタオタしている様子というのは何とも滑稽である。 「にー! 間に合わなかったら殺すんだからー! 『溺愛死』させてやるッ!」 「ヒッ!? い、今スグ焼いてきやぁすッ!!」 そうしてギンジは、逃げるようにして部屋から去って行ったのであった。 「彼は……部下というより召使と言った方がいいような気がするのだけれど」 「う、うむ……」 「ギンジさんも大変ですねぇ。テティスと出会ってしまったのが運のツキ……いえ、さしずめ縁のツキと言ったところでしょうか。しかし、彼もまたカウスと同様に愚か者ではないわけです」 「ギンジは、今のところは少なくともカウスよりはマシに見えるな。命を落とすところまで至っていないのだから」 「カウスが命を落としたのはノナと出会ったせいというわけではないと思うけれど……そうね、愛のために生きるということの大変さはよく分かったわ。愛のために戦うということも」 「フフ……愛のために戦う……私は勿論素晴らしいことだと思いますが、我々のナンバーツーあたりはバッサリと切って捨ててしまいそうですね」 「あー、アタシ、あいつが前に何かそんなこと言ってるの聞いたー!」 食う作業を一段落させたテティスは、ウサギさんをビシッと突きだすと共にようやく話の輪に入って来た。 「なんだっけ……戦いに愛だの情だのを持ちだすのは、極上料理にハチミツをぶちまけるかの如き愚行……とか」 「なるほど……彼らしいですねぇ」 「根っからのバトルマニア……ですものね」 「アタシ、いまいちピンとこなーい。だってハチミツおいしいじゃん」 「そうではないのですよテティス。ハチミツが美味しいとかではなく、この場合はどんな料理でも甘ったるい味に統一されてしまうということが問題なのです。その料理本来の味が分からなくなってしまうでしょう?」 「えー? それは分かるけど、でも戦いと関係ないじゃーん」 「つまり戦いに愛とか情を持ちこむと、戦い本来の面白さが分からなくなるどころか『やっぱり愛って素晴らしいよね、というお話でした。めでたしめでたし』……となりかねないのです。カウスの最期の戦いもそうです。ノナとの愛情話が無ければ、これは実に面白いバトルマンガになり得たかもしれない。しかし愛を持ちだした途端、これがただのラブストーリーになってしまう。それまでにバトルを面白くするために懸けた手間暇も全て無駄になる。本来料理にとって大事な要素である下味も隠し味も無視した、ただのハチミツ味になり下がるわけですね」 そう身振り手振りを加えて説明したヴァーユは、最後に「なり下がってしまう、と捉えるのがつまりバトルマニアという人種なのですけどね」と付け加えた。 「ふーん?」 テティスは分かったような分かっていないような、それでいて最早興味があまりないという風な声を出した。 「我らがナンバーツーの厄介なところは、弱者をなぶることでもなく、強者と競ることでもなく……戦いという行為そのものを楽しむというところね。どんな戦いでも自分の快楽にしてしまう」 「ね、あいつ今なにしてるの? フィル」 やはりテティスは、既に「戦いと愛の関係」に対する興味を失ったようだ。 そしてその興味は今、長らく連絡をとっていない第二神友の行方に移された。 「さて……奴は〝アンチェイン〟を調査していたようだがな」 「あー、なんだっけ? アルファモン? だよねぇ」 「そうだ。ロイヤルナイツの空白の座にして、イグドラシルにも縛ることのできない謎の存在。アルファモン。なにものにも縛られないことからアンチェインと呼ばれている」 「カルロの話だと、戦闘時間を巻き戻すとかなんとか……よく分からない能力を持っているらしいわね」 「ああ。その能力がアルファモンを無敵たらしめていた。しかしアルファモンは、来訪者を迎撃した際に滅んだのだ。私などにとっては想像を絶する世界だが……来訪者の能力からすれば、これはまあ当然の結果だったな。あれは時間を巻き戻すとかそういう次元の力ではまるで敵わない相手だ。力の規模――否、〝世界〟が違う。あれを『理不尽な来訪者』と名付けたのはイグドラシル側の連中らしい。突如として出現し、世界を蹂躙し始めたことからそう呼びだしたようだが……」 「フィル、脱線していますよ」 「ああそうだったな。……ヴァーユ貴様、自分はすぐ脱線するくせに、他人の脱線にはやたら厳しいな」 「僕は回りくどいだけです。いわば迂回。脱線と違って、最後には必ず目的の場所に行き着きます」 「ああ分かった分かった……さて、本線に戻ろうか。あの戦闘狂からの連絡が絶えたのは、アルファモンが来訪者に敗れるより少し前のことだ。つまり、奴はアルファモンと来訪者の戦いに巻き込まれたわけでもないということだが……さて、どこに行ったんだろうな」 「え? さんざん引っ張っといて、結局分かんないの?」 わざといちいち勘に障るように発言するテティスに、フィルはこめかみをヒクつかせた。 「分からん。奴が死ぬなどまずあり得ないから、必ずどこかしらにはいるものだと思うのだが……さて、この世界で通信が絶えるような場所など……」 「ダークエリア……かしらね」 クーエルがぽつりと呟いた。本当に何気ない口調であったのだが、それでもその名自体が大したものである。デジモン達にとっての――いや、この世界で生きる者達にとっての地獄にあたる地平。それがダークエリア。 だから、彼女がどんなにさりげなく呟いたとしてもその名に不快感を示すものがいるのは当然である。 「ダークエリア! って……やだぁー」 テティスは眉間にしわを寄せ、如実に不快感を露わにする。 「そんなこと言わないの。あそこは確かに恐ろしいところ……らしいけど、ほら、ミザニアの故郷でもあるのだから」 「アタシあの女嫌いだしぃー!」 テティスは一層眉間のしわを深める。まるでダークエリア――地獄よりも、そのミザニアという女性の方が忌わしいと言わんばかりである。 「神様、あの女ひいきし過ぎだしー! 無駄に美人なのも癪だしー! 私のこと子供扱いするしー!」 それは皆してるだろ、とフィルが突っ込む。 「それにあの目が……」 そこでテティスは一旦言い淀む。視線を右斜め上の中空に走らせる。適当な表現を考えているらしい。 「彼女と目を合わせると、まるで地獄の淵に立って奈落を覗き込むような……そんな気持ちになりますからねぇ」 「そう! それ! それが一番やだ! あの女怖いのー!」 テティスは、自分の最も言いたいことを実に適当な表現を以て代弁してくれたヴァーユをウサギさんでビシッと指す。 「彼女は地獄そのもの……いえ、地獄の入口です。一度地獄に入れば、そこにあるのはひたすら苦痛のみ。しかし、その入口に立った時点で胸に去来するものは果てしない絶望と底知れぬ恐怖。肉体的を苛ませるものではなく、精神を苛み蝕むもの。彼女と対面する度に、この地獄の入口の気分を味わう。彼女――ミザニアという存在は、言うなればそう……地獄よりも地獄です」 ヴァーユの口調は冗談を言う時のそれであったが、その眼差しは至って真剣そのものである。 八神友の中で最も掴みどころがなく、飄々とした男、ヴァーユ。 ミザニアという女性は、そのヴァーユでさえも深淵に導いてしまうほどの存在なのである。 「ああ行方といえば……カルロはどうなりました? 来訪者を見失ったはずですが」 「感知はできるからな。まあ遠からず再び見つけるんじゃないか? 何より、奴は執念深いしな」 「つまり目下捜索中ということね。居場所さえ分かれば、あとはシエロもいるのだから容易に追いつけるでしょうね。フィル、来訪者の移動速度はそんなに速くないのでしょう?」 「ああ。今回デファンスシティに現れた際には空間跳躍のようなことをしたようだが……平時は、ちょうど人間が歩く程度の速度で移動しているようだ。大陸の西の端に降り立ってからずっと東を目指して移動し続けているようだが……その目的地がどこなのか、いや、そもそも目的を持って移動しているのかどうかすらも分からん」 「ねー、イグドラシルも来訪者の正体が分かってないんでしょ?」 テティスはウサギさんを指先でくるくる回して弄び始めた。この話題にも飽き始めているようだ。 「だったらなんで来訪者を倒そうとするのー? いいやつかもしれないのに」 「テティス、イグドラシルにとってそんなことは関係ないのですよ。〝イグドラシルというのはそういうもの〟なのです」 「ふーん? わかんなーい」 「イグドラシルにとって大事なのは、来訪者が〝外から来た者〟であるというただ一点なのです。だから、そういう意味ではウィザーモンも来訪者と変わらない。等しく排除すべき異物なのです。その正体も目的も、かのデミウルゴスには関係ない」 「え? じゃあ人間は? 人間も異物じゃないの? こっちに来ちゃった人間を全部殺そうとしないのは何で?」 「ですから……〝イグドラシルとはそういうもの〟なのです」 ヴァーユは先ほどよりもゆっくりと、含みを持たせるようにして答えた。 「あー、今度は分かったぁ。そっかぁそうだよねー。人間は殺しちゃダメだよねぇ」 「それにしても……あれは一体何なのかしらね。理不尽な強さを持つということ以外、何も分からない……」 「もう一つ分かることがありますよ。我らの神にとって大切な存在であるということです」 「フン、その理由もまるで分らんがな。神は我々に何も話してはくれない」 「え? 〝神様のパーツ〟じゃないの?」 「パーツはパーツだろうさ。だが、何故あれがパーツなのかということがまるで分らん。それに神は、あれが何なのか分かった上で必要と申されているのか。それとも、ただひたすら強大だから求めているだけなのか……」 尖った顎に手を当てて考えこむフィルの姿を見て、ヴァーユは穏やかに、それでいて不敵に微笑む。 ビスクドールの澄んだ瞳は、その妖しい笑みを見逃さなかった。 「何か……思うところがあるようね。ヴァーユ」 「おや……鋭いですね。流石は歳の功といったところでしょうか」 「ふざけたこと言っていると切開するわよ」 「フフフ……怖い怖い」 「怖いのはお前だ。一体何を考えている? いや……何を思いついたのだ?」 「いえね……大したことではないんです。ただ、来訪者の正体に見当をつけたというだけのことです」 「けんとうー?」 ヴァーユの言葉にフィルとクーエルは僅かに緊張した。これは、先を訊きたいという意思の現れである。だが、そんな中でテティスだけはウサギさんの頭を人差し指の腹に乗せ、バランスをとってうまいこと立たせようとしている。これは、あまり興味がないという意思の表れである。 「……このガキは」 「ヴァーユ、その見当とやら……是非訊きたいものだわ」 クーエルに促され、ヴァーユは「では……」と一呼吸置いてその切れ長の瞳を閉じる。 そしてゆっくりと――瞼の奥の孔にこの微かに緊張した空気を吸い込むようにして瞳を開くと、なんともこの場にそぐわない言葉を発したのであった。 「あなた方は――神を信じますか?」 「……は?」 この間の抜けた声はフィルのものである。 「はい、信じまーす……っておおおっ!」 ウサギさんが――その二本の細耳で立った。テティスが歓喜の声を上げる 「ヴァーユ、一体どういうことなの?」 クーエルはあくまでも冷静である。 「いえね……僕はこう思うのです。来訪者は――来訪者こそが真の神なのではないのかと」 「何……だと……?」 「それは――どういう意味かしら? 先ほどの言葉と併せて説明願いたいわね」 「言った通りの意味です。来訪者は神かもしれない。ただしイグドラシルとは違う本物の神。アイオーンというやつですね。真の神。デジタルワールドでもリアルワールドでもない、〝この世界の神〟です。いや、正確には〝神の影〟――でしょうか」 「えー? 意味わかんなーい。可愛いテティスちゃんにも分かるように説明してよぅ」 「ふむ、そうですね……たとえば我々の世界が、とある小説であった場合」 「小説だと?」 「たとえばの話です。この場合、我々は言うまでもなくただの登場人物ですね。そしてイグドラシルやリアルワールドの神……デミウルゴスである彼らもまた、ただの登場人物に過ぎないのです。物語に〝登場〟という形で関わる神は、等しくデミウルゴスなのです。キャラクターに過ぎない。しかしアイオーンの神は違う。彼の神は――そう、物語の書き手であるわけですね」 「つまり、その世界でどれほど神と称えられるような存在であっても――小説という世界の中にいる限り、その神は登場人物に過ぎない……。真の神は、あくまでも小説――つまり世界の外にいながらこの世界を創造し、操作している者ということか?」 「その通りです」 「なんとなくわかるけど、わかりにくーい……」 「それはそのはずです。もしこの世界が本当に小説ならば、神は我々に知覚されてはならない。知覚された瞬間に神は小説の世界に存在することになってしまい、やはりただの登場人物になり下がってしまうわけですから。小説の世界において、神は不在であるからこその絶対者なのです」 「でもヴァーユ、それならメタフィクショナルな表現が登場する作品の場合はどうなるのかしら。漫画や何かだと、書き手――神がある種のネタ……というのかしら、そういった形で登場することもあるのじゃない?」 「確かにそういった場合もありますが、それは神本人ではありません。神をキャラクター化したものです。いわば神の影、鏡、写し身ですね。神話でいうところの、神が何々の姿を借りて降臨なさったとか、そういう類のものです。神が本当の意味で物語に登場することは絶対にあり得ない。何故なら世界――小説は、神の精神世界の箱庭なのですから。その箱庭を文章で記すなり漫画に表現するなりしたところで、神自身をそこに丸ごと放り込むことなど――こんな常識的かつ味気ないことはあまり言いたくはないのですが――物理的に不可能なのですから」 「うむ。そりゃそうだ。実に当たり前のことだな。人間が小説や漫画の中に入れるわけがない」 「そうなのです。でも――いえ、だからこそ、でしょうか。神は本当の意味で自分自身を物語に登場させることができないからこそ、世界に入り込みたいという願望を持った時、それを満たすために影を登場させるという手段に出るのです。――ちょうど、キリスト教のゴッドが自分に似せて人間を創ったように。自分をそのままキャラクター化したものでなくともいい。自分と共通の要素を持った者を登場させたがる。作品自体が書き手の鏡のようなものですからね。物語のテーマや世界観や雰囲気、文体等々に自分の性格やら信念やらを表現する場合もありますが、影を登場させるというのはそれらと同列のものでしょう。それ以上の意味も、それ以下の意味もない。戯れといえばそれまでです。しかし、作品に愛着を持ち続けるうえではこれが不可欠なことでもあります」 「……あのさー、この話長いー? 来訪者の話と関係あるのー?」 「……きっとあと一時間はかかるぞ」 「あらあら、紅茶が冷めてしまうわね」 「やれやれ、気の短い方達ですねぇ……では、できるだけ手短にいたしましょうか。テティスが今『来訪者と関係あるのか』と問いましたが、これは非常によい質問です。私が考えるに、この来訪者こそが――」 「神――書き手の影、ということか?」 「その考えは面白いわね……。この世界が物語であるという発想も。でも、そう考える根拠は何なのかしら? ヴァーユ」 「根拠ですか? いくつかありますが……いずれも根拠足り得ないほど薄弱なものです。無いに等しいかもしれません。それこそ〝強すぎるから〟とか、その程度のものです。しかし、そんな中で僕が個人的に最も有力だと思う根拠は……我らの神が、何故来訪者を必要としているのか……その答え、なのです」 「ああ……つまり、我らの神は『来訪者が神の影』であるから来訪者を求めるのだ――と、貴様はそう考えたわけだな?」 「あのお方は、今はまだ真の神ではないわ。でも、だからこそ真の神に成り代わるための計画を進めておられる……。あのお方が来訪者の〝捕獲〟をスピリット回収と同じくらい重要な目的としたのは、来訪者もまた、自らが真の神になるために必要なパーツの一つであると考えたからなのね……。そして、何故来訪者が真の神になるためのパーツ足り得るかというと……」 「そうです。来訪者こそが、真の神――その影――つまり、真の神の要素を持った存在であると、あのお方が確信されたからではないのか。僕はそう考えたわけです」 一通り語り終え、ヴァーユはすっかり冷めてしまった紅茶を口に含む。そしてヴァーユがそうするのととほぼ同時に、フィルとクーエルもまた、一息吐くべくカップに口を着けた。 理不尽な来訪者。 彼らの神のパーツである以前に、たった一人でこの世界のあらゆる存在の心と秩序を乱す者である。 フィルは思う。 ヴァーユの推理――いや、想像は面白い。だが、決してそれ以上のものでもない。仮にもし本当にこの世界が小説であるのだとすれば、彼の想像はきっとどんな推測よりも真実に迫ったのもなのかもしれない。だが、仮定はあくまで仮定である。そしてこの場合の仮定はいかにも現実的ではない。 この世界が小説だとすれば? そんな仮定は、面白い想像以外の何物でもないのだ。 だが。 ――先ほどの、あの声だ。 自分がロリコンであることがバレ……ゲッフンゲッフン。ロリコンの疑いが掛けられた時に聞こえてきた声は。 ――あれこそが、ひょっとしたら……。 神――この世界の書き手――の声だったのかもしれない。 そんな考え……閃きと呼ぶにしてもあまりにも貧弱な思いが、フィルの脳裏をフとよぎる。 ――いや、まさか……な。 彼の脳裏をよぎったものが真実であるのか、はたまたただ面白いだけの絵空事なのか……それはきっと、彼自身には終ぞ知り得無いことなのだろう。 いや、きっとそうなのである。そうに決まっている。――そうしよう。ヴァーユの言うとおり、神は不在であるが故の絶対者なのだから。 「または彼はひょっとしたら――ああ、これは先ほどの『この世界が小説だったなら』という仮定に基づいた話ですが――トリックスターなのかもしれませんねぇ」 「トリックスター……?」 「ええ。神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を引っ掻き回す悪戯好きなキャラクターのことです」 「『夏の夜の夢』の妖精……パックのようなキャラクターかしら?」 「おやシェークスピアですか……。そうですね、まさにパックはその代表格といえましょう。他にも日本神話のスサノオ、封神演義の哪吒太子、ギリシア神話のプロメテウス、キリスト教のルシファー、北欧神話のロキなどがこれにあたります」 「神や自然界の秩序を破り、物語を引っ掻き回す――か。まさに来訪者そのものだな。ハマり過ぎて、出来過ぎというカンすらある」 「ねー、その話ももういいよぉー。違う話しようよー」 テティスはテーブルの上に顎を乗せ、いかにも退屈であるという声を出した。どうやら、先ほどから自分が全く話に入っていけないことが彼女の不満であるらしい。 「来訪者じゃなくてさー……そだ、ウィザーモン! ウィザーモンは何者なのかなー? 来訪者と同じく正体不明……だよねぇ?」 「ふむ。そういえばそうだな。我々の目的には直接の関係がないため今まであまり気にしていなかったが、あれもまるで正体がわからん」 「来訪者を倒そうとしているらしい……というところからすれば、僕たちにとって敵となるべき存在には違いないのですが……。こちらは目的は分かるけれど、正体は来訪者同様不明ですからね。イグドラシルの反応からして、どうやら外から来たらしい……ということしか分かりません」 「カルロは確か、『ビンビン感じるぜ』とか言っていたよね? 正体は分かってないようだったけど、何か自分と引き合うものを感じてたみたいな……」 「来訪者の調査のために出て行った時も、実は最初にまっすぐウィザーモンとの接触を図りに行ったようだったわね。マーレの話だと、どうもコテンパンにされたようだったけれど」 「え? あのカルロがボコられたのー? じゃあさ、ウィザーモンて強いんだ? 成熟期なのに」 「メモリは解放しなかったと聞いたわ。けれど……未解放とはいえカルロを退けたとなると……あのウィザーモンは少なくとも完全体以上の力を秘めているということになるわね」 「何? 私はセントガルゴモンの記録を見て確認したが、そんな様子は全く無かったぞ。寧ろ私は、あれと一緒にいたオッドアイのガキが変態的なまでに切れ者だったということの方が印象に残ったのだが……。〝動いたら止まる〟というハッタリによって動きを封じて気化金属を冷却するための時間を稼ぎ、セントガルゴモンの関節を固着させることで本当に動きを封じてしまう。しかしその過程すらもウィザーモンが雷雲を呼び、動きを止めたところに完全体の大技を存分に叩き込んで装甲にヒビを生じさせるための時間稼ぎでしかなかった。つまりこの二つ目の時間稼ぎは、いわば機械系にとって一撃必殺となり得る雷を決めるための一石二鳥の策であったという……。雷撃を叩き込むということを軸にして遡り、ハッタリまでを組み上げる……いや、セントガルゴモンにヘビーメタルファイヤーを浴びせるところか。……これはとてもじゃないが、人間がその場ですぐに思いつける策ではないぞ」 「そのオッドアイの少年は天才……ということですね」 「いや、変態だ。天才すら凌駕しているように思える。私は歴史上の有能な軍師の名を普通よりも多く知っているつもりだが……これほどの策士は人類史上初だと思うな。かつての天才達を超越した――そう、人間の、種としての新たな地平という意味で――あのオッドアイのガキは変態なのだ」 「うわぁ、変態が何か言ってるゥ。……うぷぷ」 「誰が変態かァッ!!」 「フィルは変態だとしても、ウィザーモンは本当に何者なのかしら? そんな天才……変態的な頭脳を持つ少年を引き抜いて、来訪者を倒そうとするなんて……」 「フィル、他にセントガルゴモンの記録から……いえ、今までのあらゆる個体の残存記録から分かったことは何かありますか?」 「む……そうだな。これといったものはないが……ああ、何か道化者のような奴らしい……ということくらいか」 「道化者? ピエロなの?」 「いわゆる天然ボケのようなフシがあるようだが……こんなことは関係ないか」 道化者。ボケ。その二つの言葉を聞き、ヴァーユは目を細める。 「フフ……ひょっとしたら、彼もトリックスターなのかもしれませんね」 「それはどういうことかしら。確かに、彼もまたこの世界を引っ掻き回しているようだけど」 「トリックスターは、時には抜け目ない性格に描かれ、時には愚か者として描かれることもあるのです。ああ、両方の性質を併せ持つ者もありますが。……ウィザーモンの性格は、このトリックスターに則ったもののように思われます」 「ま、〝面白い想像〟の域を出ない意見だな」 フィルはほんの少しだけ、ヴァーユの絵空事に対して敏感になっている。 「ええ。しかし……この来訪者あるいはウィザーモンがトリックスターであるという説がもし真実であるとするなら……これはある意味で厄介です」 「厄介? そう厄介ね。引っ掻き回されるのは――」 「いえ。ただ引っ掻き回されるだけならまだマシなのですが……。トリックスターというのは、タロットカードの『愚者』とも関係が深いとも言われているのです」 「タロットカード? 愚者?」 「はい。愚者は、タロットカードのメジャーともいえる『大アルカナ』に属するカードの一つです。二十二枚のカードより成る大アルカナ。各々のカードには番号が振られていますが、愚者のカードの番号は『0』です」 「0。何か……特別な位置にあるカードという印象を受けるわね」 「そうですね。愚者のカードはトランプのジョーカーの原型という説もあったそうですが……まぁ、この際これはそんなに重要ではないことですね。重要なのはトリックスターと愚者のカードの関連性。そしてこのカードの意味するところなのです」 「ふーん? ヴァーユって、なんかタロットとか占いとかくわしそー」 「テティス貴様、肌の色だけで何となく言っただろう」 「うん。占い師っぽいし」 「さて、トリックスターとの関連性とカードの解釈は内容が一部重複しますから、……そうですね、まずはカードの解釈から語らせていただきます。愚者のカードというのは、先ほどクーエルが言った通り、特別な位置にあるカードといっても過言ではありません。というのも、やはりこれもクーエルが言った通りカード番号が0であること、そして、このカードに描かれている人物は二十二枚のカードに描かれている人物の中で唯一移動中のものであるということから来る説なのです」 「その、カードに描かれている人物というのはどういう人物なのかしら?」 「愚者って、バカってことでしょ? じゃあたぶんフィルみたいなアホ面に決まってるよー!」 「……その言葉、そっくりそのまま貴様に返すぞ。――これは尽読ではなく純粋な予想なのだが……きっと、その人物の容姿がトリックスターとの関連性の根拠となるものなのではないか?」 「流石はフィルですね。話が早い。十六世紀から十八世紀までヨーロッパで主流だった『マルセイユ版』と呼ばれるデザインのタロットがあるのですが、ここに描かれている愚者はトリックスターとの共通点を多く持っているのです。マルセイユ版の愚者は、派手な衣装を身につけ、王冠を被り、先に袋の着いた棒を持って野を歩いている……というデザインなのですが、これはトリックッスターの持つ二面性や奔放さを如実に表しているデザインなのです」 「奇抜な格好をした旅人が……か?」 「はい。まず派手な衣装ですが、これはその色合いや形状から、まるでピエロを連想させるような衣装なのです。そして次に王冠ですが、これは言うまでもなく権力の象徴ですよね。更に言うなら、王冠は神からと交信を図るためのもの……つまり霊的な力の象徴でもあるわけです。つまり、この時点ですでにこの人物は『道化者』と『霊的な力を備えた権力者』という二つの側面を持っている。そして袋の着いた棒……これは、男根の象徴であるといわれています」 「え? 何? 男根て」 テティスが無垢な瞳でフィルに尋ねる。 その瞳があまりにも穢れ無き少女のそれであったため――いや、たとえ濁っていようが少女の姿をした者に男根のなんたるかを説明しようと思うと――フィルはどう答えたものかと戸惑ってしまう。 「む……いや、何と言えばいいのか……そうだな――」 「つまりね、おチン●ンのことよ」 クーエルが妙にはっきりとした、いやに生生しい口調で答えた。 「へー……チン●のことかぁ。ってやだ……なんかその名前を口にしただけでアタシの口が穢れちゃったような気が……」 「あら……そんなことを言っては男性陣に失礼よ。フィルもヴァーユも、皆チン●を持っているのだから。それにチン●は決して汚らわしいものではなくってよ。アレは良いものだわ。……ねぇヴァーユ?」 「フフ……流石によくご存知で……。そうですね。汚らわしいものと捉えられてしまうのは些か不本意です。良いものかどうかは……ま、その人によりけり…… ですが」 ヴァーユは薄笑いを浮かべながらフィルに視線を送る。 「なっ……! ちょ、待て! 何故そこで私を見る!?」 「ひょっとして、フィルのチン●は良いものじゃないってことー? うぷぷ。可哀そう!」 「誰が矮小かぁ!」 「ゲッフンゲッフン……さて、話を戻しましょうか。男根というのはそもそも豊穣と繁殖の象徴です。そしてこれもまた、数多くの神話に登場するトリックスター達と浅からぬ関わりを持っている……。以上が愚者とトリックスターの、容姿における関連点です」 「容姿における……ということは、それ以外にも何か関連するところがあるということね?」 「いかにも。愚者は旅人であるということは言いましたね? そこに起因するものなのです」 「旅人であること……だと?」 「ええ。何故愚者のカードには、二十二枚中で唯一移動中の姿が描かれているのか、その理由は色々と考察・研究がなされていて、トリックスターとの関連性はその研究と考察の末に導き出された回答ともいうべきものなのです」 「回答……つまり、愚者が何故旅をしているのか……その問いに対する現在最も有力な見解が、トリックスターとの関連性を示唆している、ということなの?」 「はい。何故旅をしているかという謎の答えは主に二通りあり、愚者は0番のカードであるから、一から二十一番までのカードを順に渡り歩いているのだ……とするものと、他の二十一枚のアルカナを全く意識せずに自由気ままに歩き回っているのだ……とするものがあります。――そしてこの二つの見解は一見すると相反するものなのですが、実はこの二つは〝両方とも正しい〟とするのが通説なのです」 「両方とも正しい……そうか、愚者のカードは、相反する二つの側面を持つものであると……そういうことなのだな?」 「はい、その通りです。愚者はその容姿にも相反する要素を持ち、その行動原理にも相反する解釈がある――ならば、愚者はきっと二つの矛盾する側面を併せ持つものなのだと、研究者達はそういう理解をしたわけです。或いは、そもそもタロットカードというのは正位置と逆位置で違った意味を持つわけですから、この愚者というカードはタロットの本質を表すカードなのではないのかと――僕なんかは勝手にそう思っているわけですが」 「成程な。いや、それにしてもヴァーユ貴様、その知識は一体何なんだ? まさか本当に占いが好きなんじゃないだろうな?」 「占いですか? フフ、嫌いじゃありませんねぇ。ある意味では、宗教と同じ意義を持つものですから」 「同じだと? 占いと宗教ががか? それはまたどういう考えだ?」 「〝ある意味では〟同じと言ったんです。そこを間違えてはいけない。……これについてはまた後日としましょう。長くなりますから」 「もう十分ながいけどねー」 「そうね……。愚者が相反する二つの側面を持つということ自体、計算高さと愚かさの二面性を持つトリックスターとの関連点であると……そう考えてよいのかしら?」 「ええ。上手くまとめていただけて助かります。他にも解釈からの推理であるとか、推理からの関連付けやら雑事はありますが、大雑把にいうとそんなところです。……さて、大事なのはこれからですね。何故トリックスターが愚者と関係性を持っていると、何故厄介なのか……です」 「やっとこぎつけたか……。今までのが全部前置きだと考えると、嫌気がさしてくるな……」 「大丈夫ですよ。内容が重複しますから、ここからは短くすみます。――愚者の絵柄はタロットの版の数だけ存在するわけですが、先ほども名前を出しました『マルセイユ版』に描かれている愚者の絵柄をその代表として話を進めましょう。このマルセイユ版の愚者というのは、抽象的な絵柄の為、見方によっては後ろ歩きをしているようにも見えるのです。これは愚者の持つエネルギーが無意識的なものであり、一定の方向性を持たず自由気ままに放たれていることを表しているのですが、しかし、同時にそれ自体が目的であるとも解釈されており、先ほども言った、〝このカードの二面性〟を示す要因として扱われているのです。そしてマルセイユ版には愚者の後ろに犬が描かれているのですが、その犬は描かれた人物のズボンを食い破っているのです。しかし、人物の方はそれを全く意に介する様子はない。この人物の衣装や持ち物が相反する要素を持っているということは先ほども説明した通りですが……実はこの人物は自分の衣服、さらには自分の持つ棒や荷物、果ては進んでいる方向やその目的、自分を取り巻く環境のいっさいについて特にこだわりや興味などは持ち合わせていない……という見方があるのです」 「何事にも無頓着……ということかしら? それがどういうことになって厄介だと――」 言葉の途中でクーエルはハッとする。ようやくヴァーユの言いたいことを捕まえたのである。 「ああ、分かったわ……。つまり、愚者――即ちトリックスター――即ちウィザーモンや来訪者は――〝実は全く目的を持っていない存在である〟……そう言いたいのね? ヴァーユ。……でも、それがどうして厄介なのかしら?」 澄み切ったブルーの視線を受け、ヴァーユは穏やかに微笑む。 「ええ……その通りです。しかし、あと〝二歩〟足りませんね」 「待て……そんなことがあるのか? ウィザーモンは来訪者を倒すという目的があるのだろう?」 「ええ。ウィザーモンは目的がありますから、これは該当しません。そもそも普通のトリックッスターは他のキャラクターと同様、目的をもって行動するものですからね。……しかし、普通のトリックスターでなかったなら……トリックスターのような〝愚者〟であったなら――そして、来訪者がそうであったなら」 「来訪者は……その正体も目的も不明だわ……けれど、実はそれらは〝最初から無いものである可能性がある〟と……ヴァーユ、あなたは――ああ、本当に回りくどくて腹が立ってきたけれど――そういうことが言いたかったのね?」 「ええ。その通りです。……しかし、あと一歩ですかねぇ」 「来訪者の目的が無い……いや、失念していたが、これはあり得ることだ。勿論あくまで可能性だが……分からない、見つからないものが、実は最初から無いということは十分にあり得る。河童を探しても見つからない。しかし実は見つからないのではなく、河童は最初からいなかったと――そういうことは十分あり得る。これは分かる。だが……〝正体がない〟ということはあり得ないぞ。ネッシーは玩具、スカイフィッシュはハエの残像だ。いや、実際にそういう生物がいたのだとしても、その正体は〝そういう生き物〟なのだ。玩具でないなら生き残った恐竜、ハエの残像でないなら未確認の生命体。いずれにしろ正体はある。正体が無いなんてことがあるものか。それとも何か? アンチェインを初めとしたロイヤルナイツが倒されたことも、イグドラシルが異常を感知したのも、ノナが選ばれし子供を殺し損ねた原因も……全ては〝気のせい〟だったとでもいうのか? 実はそういうのがいたような気がしたというだけで、実は何もいなかったのです……と。〝正体が無い〟というのはそういうことだろう? そんなことがあるものか。それに、気のせいだった、勘違いだったとして、その場合はその気のせいや勘違いを引き起こした現象なり、原因が来訪者の正体なのだ。〝正体が無い〟という表現がそもそもあり得ない」 「それは違うと思うわフィル。ヴァーユはあと一歩と言ったんだもの。まだ何か……あと一歩踏み込んだ解釈が……。ああ、もしかしたら……〝来訪者は来訪者〟といういことじゃない? 来訪者の正体がデジモンや人間、今まで私たちが知り得たものの中のいずれかだと思い込むのが間違い。来訪者は、来訪者という種……そういう生物なのだと捉えることが正解なのだと……」 「いや、それはだから、『ネッシーの正体は恐竜の生き残り』ということだろうが。来訪者の場合で言えば、来訪者の正体は来訪者という名の未確認の存在―― いや、この度生まれおちた新たなる存在でもいいが――ということになる。〝正体が無い〟ということは、やはりあり得んぞ」 「やれやれ……最後の一歩は僕の後押しが必要なようですねぇ……」 「何か……偉そうね」 「お二人とも失念しているようですね。この話が〝もしこの世界が小説だったなら〟という仮定の上のものであると」 「何だ? それが何か関係あるのか? 小説だったら〝正体が無い〟などというふざけたことがことがあり得るとでも……? そんな――いや、待てよ」 「正体が無い……虚構ならな許される……それは……ああ。今度こそ本当に分かったわ。――『マクガフィン』ね?」 「マクガフィン――ああそうか。ヴァーユ、貴様が言いたかったのは……トリックスターからの流れで貴様が言いたかったことは、『来訪者はマクガフィンに過ぎないのかも』ということだったのかッ! な・ん・と・回りくどい奴だッ!」 「――やっと、僕のステージに上がられましたね。お二人とも」 ヴァーユはいつもより一層目を細めてほほ笑む。やっと肩の荷が下りた――そういう顔である。 だがその一方で、フィルとクーエルは逆にどっと疲れたというように、椅子の背にもたれかかった。無理もない。一言で済ませようと思えば十分済んでしまうことを、このヴァーユという青年は熱い紅茶が完全に冷め切るほどの時間を浪費して延々と回り道して説いたのだから。 本来ならばしなくてもよい苦労をしてしまった時、そしてそれに気づいた時ほど損をした気分というのはないものである。 「え? 何? マフィン? アタシ、マフィン好きー!」 「……マフィンではないわよテティス。マクガフィン」 「マック? のマフィン……?」 「テティス、マクガフィンというのはですね、要は仕掛けです」 「仕掛け……?」 「そうです。何かしらの物語を構成する上で、登場人物への動機付けや話を進めるために用いられる仕掛けのひとつですね。登場人物たちの視点、あるいは読者・観客などからは重要なものだけれど、作品の構造から言えば、他のものに置き換えが可能な物がそう呼ばれるのです」 「んー? や、ぜんっぜん分かんない……」 「もともとは映画用語か。確か、ヒッチコックだったか……? 要はスパイ映画で言うところの重要な書類で、泥棒映画でいうところの宝石だな」 「んー……分かったような……分かんないような……」 「テティス……あなたは、『はんにゃ』というお笑い芸人のコンビを知っていますか?」 「はんにゃ……? あ、知ってるー! ズクダンズンブングンゲームの!」 「そうです。そして、そのズクダンズンブングンゲームこそがマクガフィンなのです」 「へっ……? どゆこと?」 「はんにゃの代表的コント、『ズクダンズンブングンゲーム』。これはボケがズクダンズンブングンゲームという、ルールも何かもが意味不明な架空のゲームにツッコミを巻き込むというところから始まります。そして、ゲームの進行上でその不条理で読めないルールにツッコミが入っていく……という流れですね」 「コントや漫才って、そうやって分析すると酷くつまらなそうに聞こえるわね」 「私はそのはんにゃとかいう芸人すら知らんぞ」 「テティス、ついてこれますか?」 「うん、だいじょぶ」 「では、このコントにおいてズクダンズンブングンゲームは他の何かに置き換えることが可能であるということは分かりますか?」 「置き換える……?」 「そうです。ズクダンズンブングンゲームという遊びは、コントを見る限りでは、リズムに合わせて奇妙なダンスを踊り、その点数を競うというものです。しかし、このコントを繰り広げるうえで必要なものは〝わけのわからない架空のゲーム〟であり、それが必ずしもズクダンズンブングンゲームである必要はないわけですね」 「あ、そっか! 今度は分かったよ。――コントの中のキャラクターとしての二人は他ならぬズクダンズンブングンゲームをしてるわけだし、お客さんからしてもズクダンズンブングンゲームがコントの中心に見えるけど、作り手からすればそのゲームは条件に合ってさえいれば別になんでもいい……ってことなんだね? だからスパイ映画の書類で、泥棒映画の宝石なんだ」 「よくできました」 「あれ? でも……マクガフィンがどういうものかは分かったけど、どうしてそれが〝正体が無い〟っていうことと繋がるの? てか来訪者の話だよね?」 「ズクダンズンブングンゲームは……最後どうなります?」 「え?」 「最後にズクダンズンブングンゲームの全容は明かされますか?」 「ううん、結局最後までわけが分からずに……って、あ! そうか! マクガフィンは動機とか口実のためのものだから、最後までそれが何か明かされなくてもお話が成り立つんだ!」 「そうです。賢いですね。つまり、この世界が小説であるならば、来訪者は我らが神、選ばれし子供達、そしてウィザーモンを一堂に会させるためのマクガフィン……といったところでしょう。そして動機付けにすぎないからこそ……来訪者は、〝正体が無くても許される存在なのです〟。むしろ大事なのは、私たちがあれを巡ってどういう戦いをするか……ということであり、そもそも来訪者の正体は寧ろどうでもいいということに――」 重ねてフィルは思う。 この世界はそもそも小説ではない。だから、ヴァーユの言うことはただの楽しい絵空事でしかない。 いや。 本当にそうだろうか。 重ねて思う。 〝出来過ぎている〟と。 ウィザーモンがトリックスターにしろ、来訪者が神の影にしろ、愚者にしろ、マクガフィンにしろ……全てがハマっているように思える。 この世界はそもそも小説ではない。 しかし、あの時の声は――。 「ねぇ、それでどうして来訪者がマクガフィンだと困るのぉ?」 「マクガフィンは……マクガフィンだから……ね?」 「うー、わかんなーい!」 「つまりだな、マクガフィンはマクガフィンである以上、マクガフィン以外の意味を持たないのだ」 「……えー」 「何せ、マクガフィンですからねぇ」 「分かんないっつーの!」 「おやおや、どうやらこの答え自体もマクガフィンであるようですねぇ」 「ムダに綺麗にまとめんなぁーーー!」 その後三十分ほど雑談して、この場はお開きとなった。 もともと、さしたる用事があって集まった訳ではないのだ。カウスの死を報告するというイベントはあったものの、別段それが目的であったというわけではない。ただの、いつもの三時のおやつというだけである。 クーエルが席を立ち、続いてヴァーユが席を立つ。 まっすぐに部屋を出ようとしたクーエルの背に、ヴァーユは声をかけた。 「クーエル、どうです今夜。一発」 この青年は、己の情欲をオブラートに包む気すらないらしい。 「遠慮するわ。あなたはねちっこいんだもの」 「おやおや……手厳しい」 ヴァーユは、去りゆくクーエルの背中を見ながら大げさに肩を落として見せる。 道化者の仕草である。 この世界が小説などであるはずがない。あってたまるかと、そう思う。 だが、もし本当に小説ならば――トリックスターは、来訪者でもウィザーモンでもなく、あのヴァーユなのではないかと、フィルはそう思った。 抜け目ない愚か者。それがトリックスター。 フィルはヴァーユに尋ねたいことがあった。コロッセオでのことである。本人からの報告によると、「炎のスピリット二つと闇のスピリットHを回収した。選ばれし子供達に出くわし、子供達の中に光のスピリットの使い手がいることを確認した」とのことであった。 ――何故、その時光のスピリットを奪わなかったのだ? 〝神の完成〟のためには、全てのスピリットが必要である。それに、ヴァーユの実力で選ばれし子供達に勝てないということもあるまい。デファンスシティでの戦いぶりを見る限り、彼らはあそこで初めて究極体――ウォーグレイモンに至ったようであった。その際の進化のメカニズムは是非知りたいところだが、それはまた別の話である。 ――コロッセオの時点での子供達に、ヴァーユが勝てないはずはないのだ。 ならば、何か奪わなかった理由があるということだろうか。報告を受けた直後に本人に問うたところ、「ああ、そういえば忘れていました」と惚けられてしまった。 ――抜け目ない愚か者……。 トリックスター。 神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を引っ掻き回す悪戯好き。 ――そもそも普通のトリックッスターは他のキャラクターと同様、目的をもって行動するものですからね。 考え過ぎだろうか。 ――ならばお前の目的は……何だ? 考え過ぎであってほしい。 ――他にも日本神話のスサノオ、封神演義の??、ギリシア神話のプロメテウス、キリスト教のルシファー、北欧神話のロキなどがこれにあたります。 北欧神話のロキは、神々を裏切って戦争を挑んだという。 ――フッ。下らん。 所詮は楽しい絵空事。 「お嬢! チョコレートケーキ! 焼けましたぜ!」 「おーそーいー!」 ただの雑談の、話の種なのだ。 フィルはそう自分に言い聞かせ、チョコレートケーキのほろ苦い香りに後ろ髪をひかれながら――席を立った。 BACK LIST NEXT
https://w.atwiki.jp/do-little/
do-little@wikiへようこそ 本日の来訪者数: - 昨日の来訪者数: - 皆様に公開できるような内容になっていませんがご了承下さい。 m(_ _)m 管理人の独り言 このページ設置してからまだ一時間ほどしか経ってないのにアクセスカウンターが回ってる。検索サイト? と思いきや、@Wikiのトップに載ってる。まだ載せないように設定したような? ■ ブログサイトの更新情報を自動的に載せたい!! お気に入りのブログのRSSを使っていつでも新しい情報を表示できます。詳しくはこちらをどうぞ。 ■ ニュースサイトの更新情報を自動的に載せたい!! RSSを使うと簡単に情報通になれます、詳しくはこちらをどうぞ。 ■ その他にもいろいろな機能満載!! 詳しくは、FAQ・初心者講座@wikiをみてね☆ 分からないことは? @wikiの詳しい使い方はヘルプ・FAQ・初心者講座@wikiをごらんください。メールでのお問い合わせも受け付けております。 ユーザ同士のコミュニケーションにはたすけあい掲示板をご利用ください 要望・バグ・不具合報告はメールでお気軽にお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/renjodatabase/pages/108.html
分類:短編小説 初出:「オール讀物」1980年2月号 雑誌時挿絵:中原脩 収録短編集:『変調二人羽織』、『連城三紀彦レジェンド』 あらすじ (昭和二十二年九月六日) 殺人―― 簡潔すぎる二字。でもこれが、この山奥の一軒家で今日まで二ヵ月に亘って繰り広げられた残忍きわまる物語の結論となった。もう他に方法などありはしない。あの女――突然、私達夫婦の平穏な暮しに凶器をもって踏みこんできて、私達から全てを奪いとり、最終的には私から夫までも奪おうとしているあの女を殺害する以外に、もう、残された道はないのだ。 作家の滝内竣太郎と妻が静かに暮らす山奥の別荘に、辻井薫という女が尋ねてくる。滝内の仕事を手伝い始めた女は、徐々に夫婦の生活に食い込んでいき、そしてついに牙を剥いた。夫婦は女の殺害を決意するが……。 登場人物 滝内竣太郎小説家。、人嫌い。 滝内依子竣太郎の妻。 辻井薫来訪者。 村木和彦もうひとりの来訪者。 解題 (スタブ) 各種ランキング順位 オールタイムベスト・連城三紀彦短編 39位 関連作品 「メビウスの環」(『変調二人羽織』収録) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sekaiju_maze3/
世界樹の迷宮3Wiki 本サイトは、ニンテンドーDS用ゲームソフト『世界樹の迷宮III 星海の来訪者』の総合Wikiです。 第1作『世界樹の迷宮』の攻略情報は、世界樹の迷宮Wikiへどうぞ。 第2作『世界樹の迷宮II 諸王の聖杯』の攻略情報は、世界樹の迷宮2Wikiへどうぞ。 第4作『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』の攻略情報は、世界樹の迷宮4Wikiへどうぞ。 第5作『世界樹の迷宮V 長き神話の果て』の攻略情報は、世界樹の迷宮5Wikiへどうぞ。 第6作『世界樹の迷宮X (クロス)』の攻略情報は、世界樹の迷宮XWikiへどうぞ。 第1作リメイク『新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女』の攻略情報は、新・世界樹の迷宮Wikiへどうぞ。 第2作リメイク『新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士』の攻略情報は、新・世界樹の迷宮2Wikiへどうぞ。 コラボ作『世界樹と不思議のダンジョン』の攻略情報は、世界樹と不思議のダンジョンwikiへどうぞ。 コラボ作『世界樹と不思議のダンジョン2』の攻略情報は、世界樹と不思議のダンジョン2wikiへどうぞ。 Wikiを編集する際の意見や要望等は、wiki編集・要望を活用して下さい。 議論が紛糾すると、各所で更新更新となってしまいます。そのため、ご意見・要望などはすべてこちらでお願いします。 絵板および掲示板の閉鎖について サーバに使ってるマシンが寿命らしく、原因不明のフリーズが多発しています。 それに伴い、新掲示板、新絵板を2011年10月31日に閉鎖します。 それまでは騙し騙し動かしますので、データ保存が必要な場合は各自保存願います。 11/10/02 管理人 →と思っていたら起動すらしなくなる状態に。申し訳ありませんが今後は避難所などをご利用ください。 →避難所消えてたので新しく借りました。申し訳ないですが移動お願いします。 11/10/03 管理人 ■サイト内検索■ 検索 ■携帯用メニュー■ 編集・閲覧指針 「君はWikiを信じてもいいし、信じなくてもよい」 「Wiki元老院では、攻略、データ、そして絵板に於いては、原則的にネタバレを許可している。つまり、君がそれを嫌うのであれば、当該項目の閲覧時には注意して進まなければならない。そして、編集時には上記項目以外でのネタバレを極力避けるようにしたまえ」 「ストーリーに大きく関わるネタバレは、ふとした弾みで見えてしまわない様、工夫した編集が求められる」 「また、通常掲示板はネタバレ禁止となっている。それらを語りたい場合は、2ch本スレ等に移動したまえ」 「公式サイトで公開された情報は解禁されたものと判断する」 文頭を『//』で始めると、ページには反映されない内部コメントを書く事が出来ます。データ類のレイアウト変更や項目の削除を行う時など、編集者の意図を伝えるためにきちんと活用して下さい。最近、書き込まれている項目をなぜ削除したのかの理由を、コメントに書かずに削除をする人が増えています。編集合戦にならない様、項目の削除を行う際は『//』を使い、きちんとコメントに削除する理由を記入してから削除して下さい。 基本方針は編集、閲覧共にI・IIのWikiと同じです。比較にIやIIのネタバレを扱う際は、新規の方が弾みで見ない様にページ分割等の工夫をして下さい。 ■日本語版■ 発売元・開発元 株式会社アトラス 機種 NintendoDS ジャンル 3DダンジョンRPG 発売日 2010年04月01日(木) 価格 6279円(税込) 対象年齢 CERO A(全年齢) ■英語版■ タイトル Etrian Odyssey III The Drowned City 発売元 Atlus U.S.A., Inc 機種 NintendoDS ジャンル RPG 発売日 2010年9月21日 価格 $29.99 対象年齢 EVERYONE 10+ URL 公式サイト 世界樹の迷宮III 星海の来訪者 世界樹の迷宮III 星海の来訪者 開発者ブログ 英語版公式サイト Etrian Odyssey III The Drowned City 2ch・携帯ゲームRPG板の現行スレッド スレ検索 【DS】世界樹の迷宮III 星海の来訪者 B287F その他の関連スレッド 世界樹の迷宮のキャラは始原の幼子カワイイ 第60階層 【厨弐病】世界樹の迷宮脳内妄想設定スレ 第7階層 関連wiki 世界樹の迷宮Wiki 世界樹の迷宮2Wiki 世界樹の迷宮4Wiki 新・世界樹の迷宮Wiki 新・世界樹の迷宮2Wiki 世界樹と不思議のダンジョンwiki 世界樹の迷宮5Wiki 世界樹の迷宮総合 命名用Wiki 世界樹の迷宮シリーズ・次回作妄想Wiki 世界樹の迷宮シリーズ オススメ考察wiki 世界樹の迷宮用語辞典 Wikipediaの記事 世界樹の迷宮III 星海の来訪者 ■株式会社アトラスと当サイトは一切関係がありません。 ※ページの名称は変更しないでください。 最終更新日/2022-09-20
https://w.atwiki.jp/fujitan/
健康情報システムのための用語集を扱うサイトです。できる限り英文と併記します。 This page is for terminology on health information system. Most of words are closely related to Japanese custom and if you feel something strange or if you find some differences, please contact us. English Index 連絡先 千葉大学予防医学センター臨床疫学 藤田伸輔 機能別索引:Index by function 入院 Admission/退院 Discharge 入院 Admission 緊急入院 入院予約 入院決定 入院確定 入院患者数 病院滞在者数 新入院患者数 退院患者数 退院 退院予約 退院決定 退院確定 自己退院 外来 新患 初診患者 診療一般 エピソード プロブレム 主訴 愁訴 所見 評価 Assessment 計画 ソープシステム 温度板 EBM クリニカル・パス 患者基本情報 看護指示 条件付看護指示 無条件看護指示 看護連絡 看護 温度板 EBM クリニカル・パス 看護指示 条件付看護指示 無条件看護指示 看護連絡 リハビリ 薬剤 栄養 チーム医療 クリニカル・パス NST ログ集 協力します。がんばろう! -- (劉亜斌) 2006-01-11 13 43 12 名前 コメント すべてのコメントを見る 本日の来訪者 : - これまでの来訪者: -
https://w.atwiki.jp/dimensionzero/pages/1536.html
ナーガ 青の大陸に登場する新たな種族。 一般にはインド神話に起源を持つ蛇の精霊、または蛇神とされる。 ストーリーでは青の魔王が造ったゲームの中のモンスターだが、デスブリンガー・エンジェル?が発した殺意によって、ゲームと現実世界の狭間に亀裂が入り現実世界にて実体化したモンスター。 名前の法則は「蒼(惑星等の名前で二文字、最後は“星”)~」 フォース・センチュリーの新種族中では唯一、閃光の来訪者でフォーリナーとしてフライング参戦を果たしている。 ゲームにおいては主にD-0初の「ダメージマイナス」能力を有する。 これにより見た目以上のタフさを見せる。 種族「ナーガ」を持つユニット サード・センチュリー 閃光の来訪者 異界のナーガ フォース・センチュリー ベーシックパック 蒼金星スマートレイ 蒼火星ハイドロパルス 蒼木星グラビティオメガ 蒼水星アクアアルファ 蒼土星ディープアブソーバー? 蒼月星ブルーオーシャン? フォース・センチュリー エキスパンション 禁じられし邂逅 蒼海星ネプチューンロッド? 蒼天星エーギルセイバー 蒼冥星ネーレウスハーケン フォース・センチュリー エキスパンション 王を超える力 蒼流星ストームドライブ 蒼重星グランシザース 蒼王星キングトライデント 外部関連リンク wiki ナーガ
https://w.atwiki.jp/oren-matome/
ORE'N@ウィキへようこそ! 祝 正式リリース!!!!(2024/4/15) このwikiはORE'Nの非公式wikiです。 2024/8/1 木 19時〜 YouTubeライブ配信の録画を見ることができます 2024/10/1 火 10 30~12 30 定期メンテナンス 2024/10/1 火 未実装モンスター天使ジェット追加予定 2024/10/8 火 10 30~12 30 定期メンテナンス メンテナンスのたびにゲーム内の説明テキストが修正されているので、技の検証をする際にはご注意ください 2024/7/7に配布された無償ジェム500x6が画面上の玉手箱アイコンの中に入ってますので有効期限2024/9/30までにお受取りください 戦士イノ誕生祭の無償ジェム800配布は近日中に配布予定ですので有効期限(不明)までにお受取りください 詳細は公式Twitterで確認してください、メンテナンス時間は延長することがあります。 ※メンバー申請者さんへ 荒らし対策などの観点から、御手数ですが申請とは別に連絡をくださった方のみ承認しております。管理人のXアカウント(@Shatey0909)のDMに連絡をお願いします。(5/20更新) メニューから様々なページへ飛べます ※当wikiは非公式の攻略wikiです。情報の妥当性や正確性について保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。 ※当wikiを利用することによって生じるいかなる損害も当サイトでは補償致しません。 ※ご利用につきましては自己責任となりますのでご注意ください。 ※文章の著作権は当wikiにあります。内容の複写、転載を禁じます。 ※当wikiで使用している画像、情報等の権利は、株式会社コナミデジタルエンタテインメントに帰属します。 ※権利者様からの修正や削除の依頼には迅速に対応致します。 X(旧Twitter)等での拡散に際しては#OREN #オレン の使用が推奨されています。 X(旧Twitter)等でのファンアートの投稿に際しては#オレンFAの使用が推奨されています。 ORE'N公式サイト https //www.konami.com/games/oren/ ORE'N公式Xアカウント https //twitter.com/OREN573 あなたは - 番目の来訪者! 本日の来訪者数 - 人 昨日の来訪者数 - 人 祝! 開設(11/7) 祝! 1万回閲覧(4/15) 祝! 5万回閲覧(4/18) 祝! 10万回閲覧(4/26) 総合閲覧回数 - 回
https://w.atwiki.jp/gakuen2/pages/7.html
アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/25_171_ja.html たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
https://w.atwiki.jp/dangerousspy2/pages/71.html
番長G・SS2 4 :薬袋 品:2014/07/13(日) 02 42 16 エリーザベト・デスポートプロローグSS 6 :薬袋 品:2014/07/16(水) 02 53 49 最終話 希望を胸に 12 :kaze:2014/07/18(金) 13 45 10 『来訪者』 13 :kaze:2014/07/18(金) 14 16 53 『来訪者2』 14 :kaze:2014/07/18(金) 20 08 07 『女王様はどちら?』 15 :薬袋 品:2014/07/18(金) 20 55 04 スパイダンゲロスS 第一話 16 :薬袋 品:2014/07/18(金) 21 45 03 スパイダンゲロスS 第二話 19 :kaze:2014/07/19(土) 11 23 38 夜勤から帰宅、、ねむい・・・。 ラジオでポイント稼がないとねーなんてなことで、このネタ、またまた登場です(笑) 番長Gの財政状況…… 20 :kaze:2014/07/19(土) 11 59 27 時間がないのでショートSSで 百合の果てに 21 :しろは:2014/07/19(土) 11 59 32 百合原SS ハッピーエンド 裏応援スレより 11 :kaze:2014/07/18(金) 19 14 06 『アンラッキーメーカー&アンラッキーボム』
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/6694.html
博物館 一覧 コメント 特定の分野に対して価値のある事物、学術資料、美術品等を購入・寄託・寄贈などの手段で収集、保存し、それらについて専属の職員(学芸員、キュレーターなど)が研究すると同時に、来訪者に展示の形で開示している施設である。 ミュージアム(英 museum、英語発音 /mjuːˈziːəm/ ミューズィーァム)と英語風に呼ぶこともある。 多くは自然史・歴史・民族・美術・科学・技術・交通・海事・航空・軍事・平和など、ある分野を中心に構成され、収集された資料に基づく研究成果を公刊すると同時に、来訪者がその分野について幅広く知識を吸収できるように工夫されている。 一覧 化石ポケモン全般:御船町恐竜博物館 デオキシス:スペース童夢 シャワーズ:札幌市下水道科学館 孵化場所はシンオウ地方で ムクホーク:大空ミュージアムフライヤーズⅡ バタフリーorアゲハント:パピヨンシャトー コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る ↓追加しました。 -- (管理人) 2013-01-01 22 43 32 草案 一覧 デオキシス:スペース童夢 シャワーズ:札幌市下水道科学館 孵化場所はシンオウ地方で ムクホーク:大空ミュージアムフライヤーズⅡ バタフリーorアゲハント:パピヨンシャトー -- (ユリス) 2012-12-02 09 53 06